万年筆のペン先について

ペン先拡大写真


 ペン先は万年筆の顔と呼べる部品です。ペン先とペン芯を総称して「ペン先」と呼ぶ場合もあるので、この部分だけを「ニブ」と呼ぶこともあります。高級品の多くは14金や18金等の金の合金でできており、中には21金のものも有ります。万年筆の値段の大半がペン先の値段と言っても過言ではありません。 低価格品の万年筆にはステンレス合金等が使用されています。金ペン(金の合金でできたペン先)を使ったものは最低でも1万円程度はしますが、金には独特の弾力があり、耐久製に優れ、使い込むことで書き癖を吸収して書きやすくなる為、万年筆には最高の素材です。 また、インクの中には酸性のものもあり、酸に対して腐食しにくい点や、調整、修理が容易な点でも、金の方が優れています。 最近のステンレス合金ペン先もかなり優秀になってきましたが、スチールペン先はある一定の力が加わると突然グニャッと曲がる性質があります。書き味は硬めなのものが多いので、筆圧の強い人に適している様にも思えますが、スチールは復元力に乏しく、強い筆圧でそのままペン先が変形してしまう可能性もあります。変形した場合、金ペンなら修理できてもスチールではできない場合も多く、長い目で見れば、金ペンがお薦めと言えます。



各部の働き

ペンポイント
 万年筆のペン先を良く見ると先端だけ白くて丸い金属が付いているのが分かります。ペン先は多くが14Kや18Kなど金の合金でできていますが、金は弾力性が強い反面、磨耗には弱いので、紙と触れる部分には金よりも硬く磨耗に強い別の金属が溶接されているのです。これにはイリジウムやイリドスミンなど、非常に硬く磨耗に強い白金族系の合金が使われます。この部分を研磨して字幅や線質、書き味を決定していきます。加工は熟練した職人の手作業で行う為、万年筆の値段を大きく左右するファクターです。

スリット
 切り割りとも呼ばれる、ペン先の裂け目のことです。インクはこの裂け目を伝ってペンポイント、紙へと運ばれます。ペンポイントにイリドスミンなどを溶接した後、特殊な薄いカッターで切れ目を入れて作られます。一般的に、このスリットの長さが長いほどペンがよくしなり柔らかいペン先になり、短いほどしなりが少なく硬いペン先になります。また、スリットの間隔が大きいとインク出が良くなり、逆に狭くすることでインク出を抑えることができます。この微妙な開き具合の調整が重要であり、開き過ぎていても、閉じ過ぎていても本来の性能を発揮することが出来ません。 また、万年筆はスリットによってペン先が左右に分断されているので、書き方(ペンの握り方)に応じてペンポイントが動き、スムーズに書けるという重要な役割も持っています。

ハート穴
 ペンの中心付近でスリットを止める為に開けられた穴を、ハート穴と呼びます。最近のペン先は殆ど丸い穴が開いていますが、昔のペン先には本当にハート型の穴が開けられていたので現在の名称は恐らくその当時の名残だと思います。ハート穴の大きさが大きいほどペン先がよくしなり柔らかなペン先になります。また、長方形やハート型など様々な形状にすることで書き味が変化すると言われています。最近はボールペンに慣れた人が多く、筆圧が強い傾向があるので、しっかりした書き味にする為、ハート穴が無いペン先も存在します。


14金と18金の違い

 ご存知のように、金は純金を24Kとして、その合金比率によって14K、18K等と変化します。合金で用いられるのは銀や銅が多く、、14Kは585/1000(58.5%)、18Kは750/1000(75%)の金が含有されていることを示します。万年筆には14Kが最もバランスが良く、性能的にも充分とされています。しかし、高級品には18Kを使用したものも多く、その違いは好みの問題と言えます。金の純度が高いほど高価で、ペン先は柔らかいと思われがちですが、地金の硬さに関しては、14Kも18Kもそれほど変わりは無く、むしろペン先の柔らかさは地金の厚みや形状によるものと言えます。また、書き味を柔らかく感じるかどうかは、インク出の良さにも大きく左右されますし、金の純度や合金に用いる金属の種類、配合、ペン先形状、焼き入れ技術等、様々な技術的要素でペン先のキャラクターを作り出すことが出来、各メーカーによって個性が現れる面白さがあります。 また、欧米では伝統的に18金以上で無いと金と認めない習慣!?が有るそうで、日本メーカーの製品でも、高級万年筆として海外でも販売される製品の場合は18金ペン先が採用されている場合が多い様です。



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