トンボ デザインコレクションについて

トンボ デザインコレクション ZOOM707

スミ利のホームページでもご紹介しているトンボ デザインコレクション筆記具。そのユニークなデザインで大変注目を集めていますが、せっかくなのでどんな筆記具なのか少し詳しくご紹介したいと思います。かなり個人的な独断と偏見も入っていますが、一度ご覧下さい。先ずは、上のリンクから、トンボ デザインコレクション筆記具がどの様なものか先に写真を見ていただく事をお薦めいたします。

日本では鉛筆や、修正テープ、テープのりのメーカーとして広く知られているトンボ鉛筆さんが、高級筆記具を取り扱いされていることは意外と知られていないのではないでしょうか? 現在、デザインコレクションとして国内で販売されている高級筆記具のルーツをたどると、1986年にまでさかのぼることができます。意外に古い歴史があり、息の長いシリーズであることがお分かりでしょう。実はヨーロッパを始めとする海外で長年高い評価を受けており、最近になってようやく日本国内でも再評価されてきた筆記具なのです。ようやく故郷に錦を飾った、という感じでしょうか!?

さて、手元の資料によりますと(トンボ鉛筆さん提供)、1980年代当時の筆記具はどれも同じ様な長さ、太さのものばかりであり、トンボ鉛筆として「もっと書き手の個性やこだわりにふさわしく書くことの楽しさが味わえ、さらには創造性も膨らませてくれる理想のペンづくり」に取り組み始めた、とあります。その結果生まれたのが今も続くZOOM(ズーム)シリーズで、革新的なデザインは国際的にも高く評価されるトンボデザインコレクションの始まりです。

私は、トンボ デザインコレクションの筆記具を見て、常々「バブリーやなー」と思ってしまいます。今の世の中は、合理化や倹約が最重要課題!確かに安くて良い商品が増えましたが、良く見るとあちこちにコストダウンの影響も見え隠れしています。最初のZOOMシリーズが世に出た1986年と言えば、日本は正にバブル経済に突入し始めた年でもあります。 今、全くの新規にこれら強烈な個性を持った筆記具の開発プロジェクトが立案されたとしたら?果たしてGoサインが出たでしょうか??? 世の中全体が好景気に浮かれていた時代にその基本スタイルが確立され、幸運にも(実力で?)淘汰されること無く生き残ってきたトンボ デザインコレクションの存在は非常に面白いと思います。バブル時代の仕事が「無駄」としてでは無く「余裕」として残されているのです。

費用対効果の「費用」を少々置いといてでも「効果」を選んで作られたバブル時代の商品は、コストダウン優先の現在ではなかなか真似できない点が多いです。例えば、筆記具の部品に関して、このページの一番上に掲載している写真をちょっと見てください。これはトンボ デザインコレクションの代表作、ZOOM707で、バブル経済が花開いた1987年に登場した正にバブルの申し子!?みたいな筆記具です。これをよーく見てください。はっきり言って他の筆記具に使いまわしできそうな部品が殆ど有りません!このZOOM707を作る為だけに一から設計された部品がテンコ盛りです。今は高級筆記具と言えど、主要部品を幾つかのモデルで共有しているものも少なく有りません。

そもそも、こんな極細ボディーの奇抜な筆記具は最初から全ての人に認めてもらおうなどと考えていないですよね。写真のZOOM707は油性ボールペンなのですが、このボールペンは一見ノック式の様に見えて、実は回転繰り出し式と言う凝ったギミックを用いた筆記具です。こう言うと聞こえは良いですが、実はあまりにも極細のボディーを採用した為、物理的にノック機構を搭載することができなかったのです!当然ながら回転繰り出し機構の開発にも相当なコストが要ったはず!コスト面を犠牲にしてでもデザインを優先すると言う発想もかなりバブリーだと思いませんか?それを承知で商品化してしまったのは、正にバブル経済のなせる業なのでしょう!

「デザインコレクション筆記具はデザイン重視」で有ることは間違い有りません。しかし、その裏で実用面もかなり計算されつくして設計されており、それがトンボさんのコダワリなのでしょう。その証拠に、極細のZOOM707は一見すると今にも折れそうで弱そうに見えますが、手に取ると妙なしなりも無く意外なほど丈夫な事が分かります。当時はまだ珍しかったラバーグリップが付いているのも、筆記時の実用性を考えての採用でした。ZOOM707以外の筆記具もデザインや機能に細かなコダワリ部分が沢山存在します。デザインばかりでなく、優れた品質や実用性が備わっていたからこそ、ヨーロッパを始めとする海外で高い評価を受け続けているのだと思います。

バブル生まれのデザインコレクション筆記具ですが、残念なことに日本国内では一部のモデルを除き販売が行われなくなっていました。ところが最近、日本でも「本物志向」の高まりと共に、「コダワリの筆記具」を求める声が強くなって来ました。それを受けて、2003年12月に登場したのが今回の「トンボ デザインコレクション」と言うわけです。ところがこれらの筆記具は基本的に海外向け商品ですので、輸出向けの在庫から日本で売る分を少しづつ分けてもらっている!?と言うのが実情の様です(笑) 何しろ、国内カタログには掲載されておらず、パンフレット等の印刷物も外国語のものが主体!(これがまた見にくいの何の・・・注文ミスしそう!?)。まあ、そんな希少性も手伝ってか日本国内でも独特のブランドイメージが確立しつつあります。そして、何よりトンボ鉛筆さんがエライところは、バブルの香りを残した(継承した)新製品を今も登場させているところ!最近発売になったデザインコレクション筆記具もしっかり「バブル」しているのだ!

私は、1987年当時、まだ小学生でしたが、当時の大人の持ち物(クルマや家電、文具なんか)に憧れて、実際大人になってみたら世の中は不景気!周りはコストカッターにやられた製品ばかり・・・。バブルを知らない完全なデフレ世代です。トンボデザインコレクションの筆記具は、恐らく40歳代のユーザーをターゲットにしていると思うのですが(違うかな!?)、夢の無いコストダウン商品にがっかりしたデフレ世代やバブルの時代をかすってしまった世代に是非ともお薦めしたい(笑)!きっと新鮮な印象を持っていただけると思います。「何の目的が有ってこんな細い筆記具作ったの?」なんて言うリストラ(合理化)病にかかった人にも強力な特効薬としてトンボの筆記具をお薦めしますよ!詳しくは、トンボ デザインコレクションのページを見ていただきたいのですが、意外とお手頃価格の製品ばかりなのです。因みに例のZOOM707は1本¥2,100(税込)です。

勿論、実用的な商品はコストダウンの追及も必要ですし、環境の観点からリサイクル製品が増えるのも理想的です。しかし、いつの時代にも、デザインや技術の限界に挑戦したユニークな商品の存在は必要だと思います。良い商品と言うのはそうやって生まれてくるものだと思います。 私は日頃、どうせ所有するなら少しでもコダワリが有って楽しい文房具がいいなー、と思っています。また、そんな文房具をお客様にも是非ご提案したいと考えています。トンボ デザインコレクションは間違いなく所有しても、使っても楽しい筆記具だと思います。是非、お気に入りの1本を選んで、いつもの仕事や勉強に使っていただきたいと思います!


2005年8月1日  藤井稔也



※この記事は2005年に掲載したもので、現在とは事情のことなる記述も含まれます。 当初、海外向けを一部の店舗のみで展開していたトンボ デザインコレクション筆記具シリーズですが、人気の高まりにより、日本国内でも常時取り扱われる様になりました。 また一部の商品は廃番となったり、モデルチェンジされている場合がございますので、ご了承くださいませ。 2013年2月27日 追記  スミ利文具店 藤井



TOPニュース店舗情報商品案内キャンペーンコラム掲示板リンク


スミ利文具店