コラム 真空管アンプの製作
本当に久しぶりのコラム追加で、お恥ずかしい限りです。2月、3月は文具店の正念場!まだ朝食を食べてなかったなー、と気が付くと午後4時過ぎだった、と言う日もしばしばでした。朝から水一滴飲む暇が無いとはちょっと自分でも信じられない程の事態ですが、色々な人から「あんた、死ぬよ!」とご心配いただきまして、何とか無事に4月を迎えることができました!あともう一分張りといったところです。 それに、嬉しいことに昨年末からホームページへのアクセス数がほぼ倍増しまして(もともと規模は小さいですが)、お客様からメールをいただく機会も増えました。言い訳ばかりですが、この様な事情でホームページの更新が少々おろそかになっておりました。
さて、今回は真空管アンプと言うものを自分で作ってしまいましたので、それについて書いてみました。連日夜中まで仕事をした後、たまにはゆっくり音楽でも聞こうかと思い、10数年愛用のステレオの電源を入れてみたのです。ところが、アレっ、音が出ない!スピーカーの左側だけ音が出ていません。 以前別のコラムで、愛用のレーザーディスクプレーヤーが壊れたと書きましたが、まさか立て続けにアンプまで壊れるとは! 数日後メーカーに問い合わせたところ、既に修理に必要な部品が無くなっているとのことでした。まあ、何とか使える日も有るみたいですが(笑)、そろそろ買い替えの時期なのかなーと悩んでいました。それにしても家電製品は、何年か使った後、そろそろ修理が必要な頃になると、上手い具合に修理部品が無くなってる(怒)!意味無いでしょう。何とかならないのですかね?
そんな時、ある人から「真空管アンプなら音も良いし、自分で組み立てれば意外と安くできる」と言う話を聞いてしまいました。自作用にキット化されたものが売っていて、電気部品を自分で加工、半田付けして1台のアンプに仕上げると言うものです。自分は高校、大学と文系で、電気の知識も全く無く、半田付けなどは、中学の授業で2〜3時間程体験しただけですので、完成できるのかどうか不安でした。しかし、電気技術に詳しい友人がいるので、最悪の場合は彼に泣きつこう(まる投げしよう!?)と決心し、購入を決めてしまいました。幸いにも、滋賀県内のあるお店で市価よりも安く真空管アンプキットを譲ってもらうことができ、膨大な数の電子部品と複雑な回路図、超不親切な組み立て説明書を前に若干後悔しながらも、早速その日の晩から製作に取り掛かりました。
「仕事が忙しく、食事を取る暇も無かったと言っておきながら、へー!?アンプを作る時間は有ったの?」等と突っ込まれそうですが、仕事を終えて(ここが重要!)、深夜に作業を開始すると意外と面白くて、ついつい徹夜で作ってしまいました。どうも初心者がいきなり作るには少々難しいキットだった様で、お店の人からは「ゆっくり作った方が良いですよ!もしできなかったら手直ししますよ」と遠まわしに警告をいただいていたのですが、夜中に半田の煙に涙を流しながらも、何とたったの2日で完成!今回製作したのは、内部配線に基盤を殆ど用いない極めて複雑なもの!一応完成したとは言え、配線ミスや半田付け不良等が有ると即作り直しですのでちゃんと確認するまで不安が残ります。最悪の場合、爆発したり、修理不能になる可能性も・・・。強力な電圧がかかっているとのことで、感電の恐怖に怯えながら、テスターで各部の電圧をチェックしていきます。
オオォ!凄い!一発で完成です。多分。何だかよく分かりませんが多分大丈夫な気配(笑)。時間は既に午前4時を回ってます。恐る恐るスピーカーを繋げてみるとオオォ!凄いいい音!夜中なので小さい音しか出せませんが、低音がかなりの迫力で出ています。「これが真空管の音かー」と1人で関心するのでした。でもちょっと低音出過ぎなんちゃうの!?(と思ったら低音増強用のスイッチが全開になってたのに気付いてなかっただけでした)。取り合えず無事に完成したとは言え、しばらく通電させて様子を見ないといけません。ひょっとしたら、煙が出てくるかも知れないし、極性を間違って取り付けた部品が破裂するかも知れません。そんなことを心配し出すとおちおち音楽も聴けません。時折、ブーンというノイズ!?が聞こえるのも気になるし・・・。
そんなこんなで、真空管アンプを作って既に1ヶ月近くが経過しました。幸いにも、その後爆発や火災も無く(笑)、気になっていたノイズも真空管や部品が馴染んで来たのか殆ど収まりました。例の友人に内部配線の状態等を見てもらいましたが、「よく配線ミスせんかったなー」「自分なら絶対どっかで間違って作り直ししてるで」等とお褒めの言葉(勝手にそう解釈している)をいただきもう1台作ってみようかなと、調子に乗っています。下が今回作ったアンプの写真です。どうですか?高級感も有るでしょう?これをひっくり返して、裏蓋を外すと複雑な電気回路が出現します。
大昔のテレビやステレオにはみんな真空管が使われていたそうです。真空管というのはどうも原理が難しくて私には説明できませんが、要するにトランジスターと同じ様な役割を果たす電子部品らしいです。今でも性能的にはなかなか良いものらしいのですが、真空管を動かすには高い電圧が必要で、その分大きな電源部品が必要になってきます。しかも発熱するものですから、小型で発熱の少ないトランジスターの普及と共に姿を消してしまった様です。最近では、真空管の良さが再認識されつつあり、ちょっとしたブームになっているそうです。かく言う私もちゃっかり購入しましたし・・・。今でもロシアや中国で新品の真空管が製造されています。私のアンプについていた真空管はロシア製でした。
真空管アンプで面白いのが、作った直後と今とでは音質等が変化する点です。段々と馴染んでくるのでしょうか?真空管の光り方も日ごとに変化している様で、青白い電子!?の飛び方も最初の頃とは違います。段々と動作が安定してきて、気になるノイズも減って来ました。それと、妙なのが、ブーンと言うノイズが出ている時に本体を軽く持ち上げるとそのノイズ音がピタッと止まるのです。で、その手を離すとまたブーンと音が出る!友人と「こいつ生きてるのか?」「人をおちょくってるんちゃうか?」等と散々悩んだ結果、本体の金属部分に接続されている僅か1cm程度の薄い金属の部品がボディアースの役割を果たしていて、それの接触具合で雑音が入るのではないか!との結論に達しました(ホンマかいな!?)。結局ネジをきつく締めなおして解決しました。何にしろ、人の手が入り込む余地が残されているのが真空管アンプの魅力ではないかと思います。自分で作ったものなので愛着もわきますし、もし壊れても何とか自分で修理できる気がします(多分!)。
因みに、このページの一番最初に掲載している写真で、真空管アンプの下に見えている銀色の機械がありますが、これはトリオ(現ケンウッド)社のラジオで、今から27年〜28年前に製作されたものです。これは真空管式では無いですが、安く譲っていただいたもので、今でも現役で使えます(ラジオが好きと言うより古い機械が好き)。最近の機械よりもきっちり丁寧に作られていて、説明書も物凄く親切な内容です。私は、昔の製品や昔から有る製品の方が何故か使いやすくて落ち着くので、バイクは30年近く基本設計を変えていないヤマハSR(エンジンはキックペダルで始動させる)、カメラはマニュアル式(しかもレンジファインダー)、時計はセイコーの機械式(シンガポール製だが)、筆記具はインク吸引式の万年筆(しかも40年前の骨董品)、そしてオーディオは今回の真空管アンプ、と身の回りのものが次々とアンティーク化されてきている様な!?自分は懐古趣味でこれら製品を選んだつもりは無いですが、デジタルよりアナログ、クオーツより機械式、オートよりマニュアル、の方が良い(偉い)と思ってしまうのは、既に懐古趣味なのでしょうか?
皆さんも、一度真空管アンプの製作に挑戦されてはいかがでしょうか?結構はまると思いますよ。
2005年4月9日 藤井稔也