手のひらサイズの万年筆!パイロット ペチットワン登場!


この4月に、パイロット社から「ペチットワン」と言う筆記具が発売されました。手のひらサイズの低価格万年筆です。万年筆タイプのカーラーペンと言った方が正しいかも知れません。実は、以前に試作品!?を試筆させてもらったのですが(忙しくていつ頃だったか失念してしまいましたが)、書き味も良く、万年筆メーカーであるパイロットの新製品としてはなかなか良いアイデアだと思いましたので、販売店としても密かに注目していたのです。最近はゲルインキボールペン等、どのメーカーのどの新製品もそれほど目を引く特徴も無く、正直売る側としては「どっちでもえーやん」「また良く似た商品出してからに(怒)!どこが新しいねん」等と思っていたのでした(失礼!)。まあ、あんまり思い切った(尖がった)新製品ばかり出されてもこまるのですが、どうせなら売っていても、使っても楽しい新製品を期待したいものです。そんな訳で、このペチットワンは万年筆メーカーにしか作れないペンですし、ちょっとお客様の反応が楽しみなのです。

ペチットワンの良い所は、先ずデザインが小さくてかわいいところ。最近のパイロット社製品はデザインが少しずつ!?あか抜けてきたともっぱらの評判です(誰が言ってるのかって?)。万年筆のおもちゃみたいな感じもしますが、大昔!?流行ったミニ万年筆風のコロッとしたデザインが面白いと思います。 で、それなのに書き味がちゃんとしている!ペン先はスチール製ですが、ペンポイントには何やら磨耗に強く滑らかな金属が取り付けられているらしい(流石にイリジウムでは無いそうです)。1本315(税込)の商品ですが、驚くべきコストパフォーマンスだと思います!使いきりの万年筆風筆記具「Vペン」でもそうでしたが、パイロット社のペン先やペン芯の出来の良さにはいつもながら関心さっせられます。正直、これで300円とかなら、中途半端な万年筆(3,000円以下)の立場が微妙だ!? 勿論、万年筆はルックスとかも重要だから一概に否定は出来ませんが・・・。

H.17 9月26日追記!
実は、先日パイロット社の展示会があり、その会場でペチットワンの技術的な解説を受けてきましたので、追記してご紹介したいと思います。 ペンポイントにちゃんと摩擦に強い金属が溶接されていると言うのは以前にも書きましたが、実はこのペン先には秘密が有ったんです!ペン先に万年筆と同じ様にインクをペン先に伝えるスリット(切り込み)が走っているのがお分かりいただけると思います。ところが、このスリットは本物では無く、外観だけの飾り加工だったのです!良く見るときれいに溝が彫られているので気付きませんが、本当に切れ込みが入っているのは先端部分の数ミリだけで、あとの部分は全て偽物だったのです!何故こんなことをしたかと言うと、ペチットワンは万年筆初心者をターゲットにしていますので、強い筆圧で書かれてもペン先が痛みにくくなっているのです。それから、低価格品ですので、加工や調整による品質のバラツキが出るのを防ぐ意味も有るようです。スリットが無い代わりに、インクを吸収してペン先に送る為の綿状の部品が組み込まれており、実質的には万年筆と言うよりもサインペンの様な仕組みで字が書ける構造になっているのです!凄い!!

それと、このペチットワンを見て、最初にむむっ、と思ったのは、そのインキカートリッジです。ペチットワンは、ミニ万年筆風の小さなボディーを採用しているので、従来から有るパイロット社のインキカートリッジでは長過ぎて使うことが出来ないのです。そこで、ちょっと短めのインキカートリッジまで専用に作ってしまったのです!このボディーサイズにどれほどのこだわりが有るのか分かりませんが、インキカートリッジまで専用に開発するとは!気合の入り方が違いますねー。これまた大昔、パイロット社には「ダブルスペア」と言う短めのインキカートリッジがラインアップされていましたが、それに良く似ています。で、文具店としては、メーカーがわざわざ専用のインキカートリッジまで作ったと言うことで、このカートリッジを使う別な新製品の登場も少し期待してしまいます。予想では、¥1,000とか¥500程度で面白い万年筆が出ないかなーと勝手に想像しています。

ところで、私はペチットワン用のインキカートリッジを普通のパイロット製万年筆にも使えるのかと思って期待していたのですが、どうやらちょっと難しい様です。入荷したカートリッジを良く見ると、何とカートリッジの差込部分に2箇所突起が設けてあり、通常の万年筆の軸には挿し込めないように(にくく)なっているのです。これはがっかりです!12色の奇麗な色が万年筆で使えたら良いのにと期待していたのに・・・。何とかねじ込めなくも無いのですが、あえて普通の万年筆に使うなと言うことは、インキの成分が通常の万年筆インキと違うのかも知れません。ペチットワンに用いられているペン芯以外では不具合が発生するのでしょうか?その内自分の所有する万年筆を生贄に実験してみようかと思っていますが・・・。パイロットの営業マンも、「どうせなら普通の万年筆にも使える様にしたら良かったのに」と言っておられました。何か理由があると思うので、理由が分かればまたお知らせしたいと思います。

H.17 9月26日 追記!
ペチットワンのインクが万年筆に使えない理由・・・。これも展示会で明らかになりました! 上の追記で、ペチットワンは万年筆の書き味を再現していながら、そのインク供給システムはサインペン等と良く似ている、と書きました。実は、インクをスリット(切れ込み)で伝える万年筆と、、中綿に染み込ませて伝えるサインペンとでは、インクの成分が違うのです。仮にペチットワンのインクを万年筆に入れたとするとしばらくの間は普通に書けるかも知れませんが、有る程度時間が経つと、ペン先からボタボタとインキ漏れを起こすと言うのです!構造上の都合からこのインキを万年筆で使うことができなかったのですね!(何故、ペチットワンを万年筆と同じ構造にしなかったの?と言われそうですが、¥300と言う低価格で品質を安定させる為には「大人の事情」が多々有ったと言うことでご理解を)

ところで、このペチットワンは、「かわいい手のひらサイズ。オトナの書き味ペチットワン」等と言うキャッチコピーが用いられています(手元の資料には)。ここからも分かるように、この商品は若年層をより意識して作られています(別にオトナが使っても何ら問題は有りませんが)。最近は、特に若い人の万年筆離れがメーカーにとって深刻な問題です。そこで、少しでも万年筆に関心を持ってもらおうと企画されたのがこのペチットワン、と言う訳です。まあ、これが売れたからと言ってすぐに万年筆への関心が高まるかと言うと、そんな単純なものでは無いと思いますが、その効果に大いに期待したいものです。「将来の万年筆ユーザー」が育つ環境作りも大切ですから。

ペチットワンに限らず、万年筆は基本的に水性インキ(直液式)を用いるので、紙の種類によってはインキが裏抜けしてしまうことが有ります。それにゲルインキと比較すると滲みやすいのも事実です。レポート用紙や便箋等に書くには問題無いと思いますが、ノートや手帳等の様に両面筆記する場合はちょっと気になる方が居られるかもしれません。万年筆好きの人は、そんな欠点とも思える部分も「味」として納得できるのですが、最近の滲まないボールペンに慣れた若い方々はどうお感じになるのか、少し心配な点も有ります。しかし、先日あるお客様に1,000円の万年筆を地方発送したところ、「万年筆は初めてでしたが、いつも滑らかだと思って使っていた某社のゲルインクボールペンよりもずっと軽い力で書くことができ、とても驚きました」とご感想をいただきました。高級品に限らず、万年筆には筆記具として何か独特で特別な良さが有るようです。このペチットワンは、値段やルックスはそれこそ「オモチャ」の様ですが、しっかり万年筆の書く面白さを持ち合わせていると思います。皆様も是非パイロット ペチットワンをお試し下さい。



2005年4月17日  藤井稔也
2005年9月26日 更新



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