コラム


飛び出すアポロウインカー


 先日の定休日に、友人と愛知県長久手町にある、トヨタ博物館に行ってきました。ここはトヨタ自動車が世界中から集めた歴史的に貴重な車が多数展示されています。展示車の大半が今も走れる状態に整備して保たれている点もここの凄いところです。当日は「国産車誕生100年 日本くるま意外史」という企画展が行われており、多くの人で賑わっていました。

 外国製のクラシックカー等も多数並んでいましたが、個人的に興味を持ったのは戦前、戦後の日本車です。3輪トラックを始め、手作り感漂うクルマ?が走っていた当時を想像すると、とても面白いものです。気付いたのは、クルマを製造(開発)していたのが、東京や大阪だけでなく、地方の企業や個人が多いことです。情報も、技術も、材料も、道路すら無い様な時代に、なんでこんな田舎の人(失礼!)がクルマを作ろうなんて考えたのか、また作ることができたのか・・・。今からすると、玩具のような性能に、家が建つほどの値段!どんな人が買ったのかも気になります。

 そんな中、面白い展示を見つけました。それは、アポロウインカーという方向指示器です。スミ利のWEBサイトのトップページにうちのおじいさんがバイクに跨っている写真を掲載していますが、この写真のバイクを良く見ると、バンパーの横に何やら黒くて長細いものが付いているのに気付きませんか?実はこれはウインカーで、曲がるときにここから矢印みたいな物体がぴょこっと飛び出す仕組みになっています。聞くところによると、映画「となりのトトロ」のバスか何かに付いていたらしいですが、皆さんご存知でしょうか?今の車やバイクはみんな電球が点滅するタイプですが、昔はこんなものを使っていたんですね!年配の方なら懐かしいこのウインカーをアポロウインカーと呼ぶそうです。

 前々から一度見てみたかったアポロウインカー。トヨタ博物館では、スイッチを押すと実際に動かせる様に展示されていました。子供やおじさん達の追撃をかわしつつ、展示ブースに陣取り、おもむろにスイッチを押すと、「ズしゃッ!」。想像していたよりも重厚な動作音と共に指示板が飛び出てきました。ただの板だと思っていたら、指示板には矢印型の型抜きがしてあり、オレンジの電球が弱々しく灯っているではありませんか!現代人から見るとかなりシュールなアイテムです。

 さて、このアポロウインカー、何故こんなネーミングかとい言うと、アポロ工業という日本の会社が作っていたからだそうです。ちょっと意外ですね。外国のものかと思っていました。昭和30年代初頭までのバイクや車に採用されていたそうですが、その後段々と姿を消したそうです。家に帰ってからちょっと調べてみたところ、このアポロ工業はウインカー需要の低迷が続き、昭和39年に現在のサンウェーブ工業に合併されたそうです。サンウェーブ工業と言えば、キッチンや流し台で有名なメーカーですが、アポロとはプレス加工技術で共通点が有った様です。

 更に意外なことに、このアポロウインカーは、今の車やバイクに取り付けても車検OK!の様です。勿論今は製造されていないので新品で買うことはできませんが。街中を走っていて前の車からビョコッとこんなウインカーが飛び出してきたらびっくりしますよね!でも、5人に1人くらいのお巡りさんには停められそうな気もします。「君!なんやこれは!!」「えっ!これ車検OKのはずですけど・・・」みたいなやり取りが想像されます。今、売っていれば自分のバイクに取り付けてみても良いかな!?

 トヨタ博物館は、自動車の博物館ですが、古いカメラや家電の展示もあり、クルマ好きでなくても楽しめると思いました。女性や年配の方も結構沢山来館されていました。皆さんも機会があれば一度行ってみてはいかがでしょうか?


2004年6月24日  藤井稔也
 


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