スミ利の口から紹介せずにはいられない! 

パイロット 万年筆

カスタム743

1本¥39,600 → 販売価格や送料等はお気軽にお問い合わせ下さい。

カスタム743のPOP スミ利文具店  カスタム743ペン先
パイロット 万年筆 カスタム743 CUSTOM743  パイロット 万年筆 カスタム743 CUSTOM743
適度な重量感と太さ、大きなペン先。地味だけど、カスタム743は魅力いっぱい!
  


今回スミ利がご紹介するのはパイロットの高級万年筆カスタム743です。万年筆に詳しい方なら、「なんで今頃カスタム743なの?」とお思いになるかも知れませんね。確かにカスタム743は新製品ではありません。 カスタム74(当時1万円)と言う万年筆が発売になったのが確か1992年頃だったと思います(74と言うのはパイロット創業74年目に発売になったことを意味します)。 その翌年、上級モデルとしてカスタム742(当時2万円)とカスタム743(当時3万円)がラインアップに追加されましたので、かれこれ15年近くにはなると思います。※2007年にアップしたページです。

このカスタム743はパイロットの高級万年筆の中でも看板モデルとして定番中の定番的存在!  珍しい限定モデルでもなければ、マニアックな機能やデザインが取り入れられている訳でもありません。 要するに全国津々浦々の万年筆を売っているお店で手に入ってしまう商品です。ネットなんかではスミ利よりも安く販売しているところも有るはずです。まあ、あえて今さら宣伝するまでも無い様な商品かもしれません。

では何でそんな商品をスミ利が紹介するのかと言いますと、それはもう一言「スミ利の(私の)口から皆さんに言わずにはいられない!」と言う気持ちが強いからです。それから、メーカーであるパイロットさんのホームページでは、1本1本の万年筆についてあまり詳しく解説されていません。カスタム743について詳しい情報が欲しいと思ってもたいした情報は手に入らないのです。そこで私がわかる範囲で補足してみようと思いました。 

カスタム743はスミ利がホームページを公開した直後からいつかご紹介しようと計画していました。 最近は雑誌などを見ても、限定品やマニア的こだわり品の割合が物凄く多くなっている気がしませんか?むしろそれらの特別な商品が普通になってしまっている気がします。それはそれで結構なんですが(私も特別モデル大好きです)、万年筆を売る側も買う側も、ついつい特別な万年筆だけを珍重し過ぎて、メーカーの定番としてカタログに掲載されている万年筆を軽視しているのでは?と心配になったのです。そこで、今回カスタム743のご紹介となった訳です。全国のお店でカスタム743は販売されていると思いますが、同じ商品を同じ値段で売っていたとしても、スミ利(私)はこの1本にかける思いが違う!とでも言っておきましょうか(笑)。

カスタム743が発売された当時、私はまだ高校生だったと思います。1万円のカスタム74が登場した当時は「1万円でこの高級感!?凄いお買得!!」とか高校生ながらに感じたものです(勿論、自分が買う立場ではなくて売る側の立場ですよ)。当時としては衝撃的な「本物志向」を持った万年筆だったんです。カスタム74シリーズは。 それから上級モデルの742(2万円)と743(3万円)が追加で発売されることになりました。 正直、カスタム742も743も派手な装飾を一切廃した質実剛健な万年筆です。外観は殆どカスタム74が少し太くなっただけ・・・。ぱっと見ただけでは1万円と3万円の違いなんか見分けられない人の方が多いのでは?と当時から心配していました。カスタム74と似た外観(デザイン)にプラス1万円や2万円のお金を払ってくれるお客様はいるのだろうか?と。 ですが、私は親の意見は全て却下して仕入れを決定しましたね(笑)。 これは置くしかない!と(この当時は細字、中字、太字の3種類しかペン種が無かったので比較的導入しやすかったのかも知れません)。

ところが、その当時私は何度も印象的な体験をしました。 店でカスタム74(1万円)を買うつもりで試筆されたお客様が「うん。これでいいわ!これにします。でも、せっかくやからこっちの2万円のもためさせて!」と言うことで試筆をしていただくと・・・。「おぉー。あれ?うわー。どうしょー。やっぱり2万円の方(742)がえーなー。高いけどやっぱりこっち(742)にします!」となるのです。しかも続きが有って、「こうなると3万円の方がどんなんか気になるから試筆だけでもいい?買わないけど(笑)」と言われて743の試筆をしていただくと・・・。「あー。違う。これ(743)が欲しい」となって結局カスタム743を買っていかれると言うパターンです。 うちではやはり1万円のカスタム74が売れ筋ではあったのですが、この様に順番に試筆した結果カスタム743をご購入いただく方が結構多いのです。これは特に脚色したお話しではなくて、実際に手持ちのお金が無いので家まで取りに帰られたり、銀行に走られた方もおられました(当時のスミ利は店頭でクレジットカードが使えなかったんです)。 そんな、経験から私は、万年筆を外観や値段だけで評価するのは危険だな(勿体無いな)と思う様になりました。そして、カスタム743と言う万年筆を見直した訳です。


ここからはカスタム743の薀蓄(うんちく)的な部分をご紹介しましょうか!先ずその前に、カスタム74シリーズは発売当時「スパルタ品質」と言うキャッチコピーで宣伝されていたことを覚えておいて下さいね!この「スパルタ品質」と言うコンセプトで様々な部分が設計されています。作家さんなど、書くことのプロが使っても満足していただける様に考えて作られたと言うことですが、一般の方にも、例えばポケットに入れて持ち歩いても布との摩擦で傷がつきにくいとか、金具の金メッキが剥げにくいとか・・・。色々考えて作られているのです。

クリップひとつとっても、パイロットのこだわりが有ります!
カスタム743のクリップ  カスタム743のクリップ

カスタム74シリーズに共通して言えることですが、クリップの品質が抜群です。何の変哲もないクリップに見えますが、そのバネ力(挟む力)はかなり強力です。ハードな使用でもくたびれない頑丈さを備えています。逆に買った直後はバネ力が強過ぎるほどです!だから、好き嫌いも分かれるのですが、しばらく使い込むとその良さが次第に感じられるのではないでしょうか? それに、クリップやリングの金メッキも剥げにくい様に高品質な仕上げになっていますし、ボディーの素材も、摩擦に強く使い込むと味が出る最高級のアクリル樹脂を採用しています。長く使い続けられる様に、正にスパルタ品質で設計されているんですよ! それに、クリップのデザインを良く見てください。 丸い球が特徴的なこのクリップは「雨垂れクリップ」とも呼ばれるもので、万年筆のペン先をモチーフにデザインされているんですよ!お分かりになりますか?  先端が球状になっていますが、実はこの加工が非常に難しいそうです。まん丸にとっても美しく加工されているのは、パイロット社が金属加工技術の高さをアピールする意図もあるんですね!

装飾リングもパイロットの技術力の現れ!
カスタム743のリング  パイロット カスタム743のリング

キャップに取り付けられた装飾リングも743は豪華ですが、これにもパイロットのこだわりが! 実はパイロット社は指輪やネックレス等の宝飾品の製造でも有名な会社なんです!以前、パイロットの社員さんに「万年筆のペン先を作る横で指輪とかも作ってますよ」「万年筆のペン先は14金や18金でできていますが、その技術から宝飾品に展開して今では結構シェアが高いんですよ!」と言われました。 このリングはパイロットが誇る高精度な真円製造技術を駆使して、宝飾品の美しさを兼ね備えた自慢の逸品なんですね!

インクの吸入やペン芯にもこだわりあり!
パイロット カスタム743のプッシュプルコンバーター  パイロット カスタム743のペン芯

カスタム743に装着されているインキ吸入コンバーター(写真・左)は、プッシュプルコンバーターと言って、空気圧を利用して大量のインキを一気に吸引できる優れものなんです。作家さんの様に沢山の文字を書かれるヘビーライターにも喜ばれる嬉しい装備です。コンバーターを使うとペンを洗浄する時にも便利です。勿論、取り外してカートリッジインキを使うことも可能です。  更に、万年筆のペン芯にも注目!写真の右を見てください。このペン芯はパイロットが長年研究して開発したチップフィルペン芯と言うものです。多重構造のペン芯に精密な加工で、インクを供給する為の溝、余分なインキを溜めておく為の溝、空気を排出する為の溝が彫りこまれており、気圧変化によるインキ漏れや擦れ、ボタ落ち等のトラブルが少なく、滑らかに書けるのです。このペン芯のもう一つの特徴として、インキボトルからインキを吸入しやすい様に設計されている点があげられます。 

普通の万年筆はインクボトルにペン先の根元付近まで浸けて吸入しなければ上手くインキを吸引できません。ですので、ボトル内のインキ残量が減り、液面が低下すると新しくインキを注ぎ足すか、ボトルを傾けてインキを寄せて吸入する必要があります。それに対し、チップフィルペン芯が付いた万年筆はボトル内の液面が低下してもペン先のハート穴付近までインキに浸せるだけの量が残っていれば吸入することができる様になっているのです。 勿論、チップフィルペン芯でも普段は可能な限りペン先の根元付近までインキに浸して吸入していただくほうが確実にスピーディーに吸入できますが、ハート穴付近まで浸けるだけでも吸入できる設計がなされたチップフィルペン芯は、普段万年筆をよく使う人ほどメリットを感じていただけるのではないでしょうか?

そしてやはりペン先にこだわりあり!
パイロット 万年筆カスタム743のペン先  カスタム743のペン先

14金・15号大型ペン先にも勿論こだわりが有ります。上の写真の左はカスタム74と743のペン先を比較したもの。これだけ大きさが違います。パイロットの万年筆にはペン先の先端にイリドスミンと言うイリジウムとオスミウムの多重合金が溶接されています。多くのメーカーでペンポイントに採用されているイリジウムよりも硬く磨耗に強いのがイリドスミンの特徴です。大正初期、パイロットの創業者である並木良輔は、海外メーカーの高級万年筆にも使われていたイリジウムを取り寄せようとしましたが、なかなか手に入らず、仕方なく国内でイリドスミンを手に入れることにしました。イリドスミンは硬くて磨耗に強いのですが、精製するのに摂氏2300度もの高温技術が必要な為、使い道も無く殆ど有効利用されていなかったそうです。そこで、並木良輔は研究の末、映画用映写機の光源に用いられていたアーク灯の台でイリドスミンを溶かす方法を考案。こうしてペン先からペンポイントまで全て国産の技術で生産することに成功、1918年(大正7年)に初の純国産万年筆「パイロット万年筆」の販売を開始しました。 当時、イリドスミンの精製にアーク灯の技術を応用することは、門外不出の企業秘密とされていたそうです。 パイロット万年筆が長年の使用にも耐え、滑らかな書き味を持続できる最大の秘密がイリドスミンにあると言えます。

また、高級万年筆には金の純度がより高い18金が採用されることが多いのですが、カスタム743は3万円と言う価格ながらあえて14金ペン先を採用しています。 14金は金を58.5%含有する合金で、万年筆に必要とされる弾力性や耐久性を備えた非常に優れた素材です。特に現在はボールペンの普及により、人々の筆圧は知らず知らずの内に強くなっており、カスタム743はそんな現代人が安心して使える様に、14金ペン先を採用しています。ステータス面を重視すれば18金ペン先にするのも正解ですが、あえて地味ともとれる14金を選択した点にパイロット社の誇りを感じます。だって、金の地金の価格で考えれば14金も18金もそんな大騒ぎするほどの違いはないですよ! せっかく3万円も出すのだからどうせなら18金ペン先にしてくれれば良かったのに・・・と言う気持ちも分かりますがペンポイントにイリドスミンを溶接した際の耐久製、安定性も14金の方が優れているとも言われます。イメージにとらわれずに万年筆を選択できる人だけがカスタム743の良さを味わえるのかも知れませんね。

また、カスタム743の外観上の特徴でもある、ペン先の大きさについて、以前パイロット社の営業の方から面白い例え話を伺いました。それは「クルマの排気量の違い」に似ている、と言うのです。 排気量2000c.c.のクルマでも実用的には十分です。勿論高速道路も走れます。それなのに、3000c.c.のクルマが存在しますよね。何故大きな排気量のクルマを選ぶかと言うと、所有する満足感であったり、好みであったり・・・要は実用性+αの「余裕」をとるかとらないかと言うことになります。実用性だけ考えればそれこそ1000c.c.でも3000c.c.でもクルマはクルマです。万年筆のペン先も、大きさで良い悪いが決まるのではなく「余裕」の違いです。言葉では上手く説明できませんが、排気量の大きなクルマの良さは長距離を走ってこそ分かる様に、カスタム743で「大排気量ペン先」の余裕を是非お試しいただきたいものです。 それから、これは余談ですが、カスタム743にはフォルカン(FA)と言う面白いペン先もラインアップされていますよ!


と、まあ長々とカスタム743について書いてきましたが、いかがでしたか? うちのお店はご承知の通り、有名店でも大型店でもありません。資金の問題、スペースの問題・・・文具の仕入れ一つとっても、例え良い商品であっても何でもかんでも仕入れられる訳ではありません。色々と考えて悩んで商品の1個1個の仕入れを決定します。 最近は万年筆も実用性よりも趣味性が重視されつつあり、雑誌などでは限定品や特別モデルの話題でいっぱいですね。でも、うちは限定品や特別モデルを多く取り扱う様なお店でもありません。 勿論、その様な商品も扱っていますし、個人的にも好きなのですが、基本的には普通のどこにでも有る商品を売っていかなくてはならない訳です。うちなんかよりももっと沢山売られるお店やこだわりの技術や品揃えが魅力的なお店も多数存在しますので、うちの様などうって言うことのないお店は非常に厳しい今日この頃です。 同業者の間でも「もはや万年筆は商売にならない」と店頭から外されるところも増えました。ですが、昔から「文具店には万年筆が売っていて当然!」と言う信念(むしろ思い込み!?)をもってやっています。それにやっぱり、どこにでも売っている普通の商品って大事だと思うのです。基本がなけりゃ特別も無い!普通品があってこそ魅力が増す限定品、特別モデルだと思うのです。それで今日もこうして商売を続けている訳ですね(汗)。で、そんなうちの様なお店にとってカスタム743と言う万年筆は非常にありがたいというか、こんなお店でも誇りを持って売れるペンなんですね。

商売人って、高価な品物ではなくても、例え鉛筆1本、ノート一冊でもよその店じゃなくて、自分のお店で買ってもらいたいと願うものです。今回ご紹介したカスタム743は限定品や特別モデルではなく、パイロットの定番モデルです。全国のお店で買える商品です。仕方の無いことですが、このホームページをご覧になってお近くのお店でご購入される方もおられるかも知れません。でも、頑張って「せっかくならスミ利で買ってやるか!」と言ってもらえる様なお店にならないとなー、と思っている今日この頃です。

2007年2月7日  藤井稔也


※2024年7月更新





※近年、新商品の追加もあり、店頭スペースの事情から、スミ利ではカスタム743はFM(中細)と、FA(フォルカン)の2種類のペン先をメインに取り扱いしております!因みに、FA(フォルカン)はイカの様な個性的な形をしたパイロット独特のペン先で、とっても軟らかく毛筆の様に筆跡に強弱がつけられるのが特徴です。 
 細字や中字もスタンダードな逸品としてお薦めしたいのですが、近頃は筆圧強めの若いお客様にはF(細字)が不安なケースや、M(中字)では筆跡が太過ぎて使いにくい・・・とのご意見もあり、間を取ったFM(中細)をお薦めしています。 実は、FA(フォルカン)も字幅的には中細に当たり、標準的な弾力でオールマイティに使いやすいFM(中細)と、個性的な軟調が楽しめるFA(フォルカン)の展示は、案外好評です。 受注後の取り寄せとなりますが、スタンダードな細字や中字も手配可能ですので、お気軽にご相談下さいませ。
 常時在庫は各1本ずつなので、ご来店時に売り切れてしまっている場合もありますが、店頭にお越しの際は是非ご覧ください!売り切れの場合や、上記以外のペン先をご希望の場合は取り寄せ販売となります。  また、通信販売をご希望の方には地方発送も承っております。販売価格や送料、お支払い方法などをお見積もりいたしますので、以下をご参照の上、お気軽にお問い合わせくださいね!

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