コラム 自転車で琵琶湖一周


先日、大学生の頃からの野望!?の一つであった「自転車で琵琶湖一周」を遂に実行してしまいました! 滋賀県民にとって琵琶湖一周は、「免許をとったら先ずかなえたい」目的の一つで、クルマやバイクで出かける人は男女問わず結構多くいます。私もクルマとバイクの両方でもう何度も琵琶湖一周しています。一般的な琵琶湖一周は距離にして200km弱(コースによって異なります)、クルマだと一周するのにおよそ5〜6時間ほど要します。 他府県にお住まいの方は湖を一周するくらいたいしたことでは無いと思われるかも知れませんが、クルマで走る場合でも琵琶湖をただの湖だと思ってなめていると、ちょっと痛い目にあいます。走れば分かるこのデカさ、です。

因みに滋賀県民は、特に他府県の人に対しては琵琶湖の凄さ、優位性、有用性などを語る際、むちゃくちゃ熱くなります(笑)。冗談半分で「琵琶湖って京都にあると思ってたー」なんて言われようものなら、敵意むき出しで説教が始まります。「日本最大の琵琶湖をなめんじゃねー。で、琵琶湖は間違いなく、確実に、滋賀にあんだよ!滋賀に!! 2位の霞ヶ浦なんかとは格が違うんだよ格が!(怒)」と。 特に京都や大阪の人が相手の時は「琵琶湖の水やらんぞ!京都や大阪の人間の命は滋賀が握ってるんやぞ!参ったか!!」とか言ってしまいます(笑)。でも、実際の滋賀県民は普段は意外と琵琶湖のことを意識していません(笑)。偉そうに言っておきながら琵琶湖に泳ぎに行ったのは子供の頃に2〜3回だけとか、普段は釣りもしないし琵琶湖に近寄ることも滅多に無い、という人結構多いと思います。 琵琶湖の最大水深は竹生島沖の104メートルで、琵琶湖の最初は遥か昔、今の三重県あたりで誕生した、なんていうことを知らない滋賀県民は大勢います。でも他府県の人と琵琶湖の話題になれば、滋賀の全権大使にでも任命されたかの様に語りだすので皆さん要注意ですよ(笑)!これは京都の大学に通っていた時に私が発見した滋賀県民の特徴です(笑)。でもやっぱり滋賀の人にとって琵琶湖はちょっと特別な存在かも知れません。 


で、まあ、話がそれましたが琵琶湖一周というキーワード自体は滋賀県の人にとっては結構ポピュラーなものだと思います。ただそれはクルマやバイクを前提にしています。特に学生や免許とりたての若い人には人気ですね。自転車による琵琶湖一周についても、大学生の頃なんかには、友人とお酒を飲んだ時などに誰からとも無く「今度、自転車で琵琶湖一周でもしてみるか!」「おー。やろうやろう!」なんて聞こえてきたり・・・。それで実際にやってしまう人々もいるようですが(笑)、たいていは、「また今度な」とか「絶対行かねー」とか「誰が?」とか「自転車は無理なんちゃうの?クルマぐらいにしとこうな」なんてことでうやむやになってしまい、実際に実行する人はあまり居ません。 夏休みの時期などに高校生のグループや大学生が無謀にも挑戦して炎天下の道端でグロッキー状態になっているのはよく見かけますが(笑)。そんな彼らの死んだ目(一点凝視になっている)を見ると、あーやっぱり素人が自転車で琵琶湖一周するなんてあさましい行動だったんだ!琵琶湖、怖っ!なんて思ってしまい、いっそう躊躇してしまう訳です。

実は、自転車の琵琶湖一周については、私の様な素人では無く、ロード系の自転車(競輪の自転車みたいなやつ)に乗っている様な、上級者の人々はやってる人が多いです。 日頃からトレーニングをしたり、自転車で長距離を走ることに慣れている人にとっては琵琶湖一周はなかなか良いイベントの様です。休日ともなるとお揃いのジャージを来た自転車集団がもの凄い速度で走っていくのをよく見かけます。聞くところによると、早い人は6時間程度で一周するそうです(バイクやクルマと同じ!)。

私が何で急に自転車で琵琶湖一周する決意をしたかと言いますと、つい先日(ほんと3〜4日前のことです)新しい自転車を買ったんです。なんのことは無い普通の軽快車、要するにママチャリなんですが(体力が無いので少し奮発して外装7段変速つきにしてもらいました。自転車も安くなったものですね)、実はこの5年ほど自転車には殆ど乗っていない状態でした。数年前に友達と一緒にマウンテンバイクを買ったことがあり、値段の割りに性能も良くなかなかの自転車だったんですが、いかんせんマウンテンバイクはチェーンがむき出し、荷物は積めない、サドルが痛い、と言った不都合もあり、その上独身とはいえ30にもなるとあんまりカッコいい自転車も返って気おくれしてしまって(笑)、フレンチバルブ用の空気入れが壊れたと同時に殆ど乗らなくなっていたのです(汗)。 ここ数年、スポーツもやっていない上、仕事はクルマでの配達やパソコン仕事が大半。おまけに自営業で自宅勤務なので通勤も無く・・・。自分でも怖いくらい体力が失われていました。小動物並みの力しかなかったりして(汗)。ちょっとした移動もバイクやクルマを使う始末。ガソリン代も上がっているし、環境にも悪いし・・・。ちょっと近所の郵便局に出かける時などには自転車の方が便利だな!ということで新しく自転車を購入した訳です。

近所の自転車屋さんに注文しておいた自転車が届き、ちょっと乗ってみると、高校生の時、おとなりの八日市市(今は東近江市)まで毎日約12キロの道のりを自転車で通学していたことを思い出しました。そういえばあの頃は年間5000キロ以上は自転車で走ってた計算になります。で、熱しやすい私は、翌朝買ったばかりの自転車に乗って一路八日市を目指していました!高校生の時は35分程度で到着していた(速っ!)ところ、50分近くかかってしまいました(しかもへとへとになりました)。高校の時、毎日この距離を通学してたとは、我ながら感心します。というか今の体力の無さに情けなくなってしまいました。でも何故か「琵琶湖一周いけるな」などと血迷った気持ちが芽生えてしまいました!自転車の琵琶湖一周、素人は一泊二日くらいで回るのが良いそうですが、ここは意地でも日帰りで一周してやる!計算によると時速15キロ前後で走りきればいい感じで家にたどり着けるはず!(あまり科学的な根拠は無いですが)

誰か友人を巻き添えにしようかとも考えましたが、どう考えても琵琶湖一周はキツイ。途中、「藤井君に騙された」とか「誰が自転車で琵琶湖一周しようなんて思いついたんや。誰が。」とか言われても困るし・・・いやそもそも途中から口も聞いてくれなくなるかも。ここは人間関係にヒビが入るのを防ぐ為にも一人で行くしかないな!と決意したわけです。でも、よく考えてみれば、例え友人を誘ったとしても「遠慮しとくわ」とか「家で応援しとくわ」とか「ははは!いやー、ははは」とか「何言ってんの?」とか言われそうだな。実際、今年で30歳。先日だって友人の一人が子供抱いて店に来たっけ・・・。「自転車で琵琶湖一周」恥ずかしくて言えないな、マジで。そんな風に想像すると、もう一人で行くしかない!でも、今日より明日、明日より明後日のほうが歳とって体力が無くなっていく!(情けな・・・)そんなら明日は日曜やし!早速明日出発すっか!!

てな訳で、翌朝の午前4時、こっそりと近江八幡の自宅を出発したのであります。まだ真っ暗な道をひたすら琵琶湖に向けて走るんですが、自転車道も雑草でいっぱい、石ころや動物の死骸らしきものも落ちてるし非常に危ない。これはきついなーなどと思いながら恐々進みます。今回は近江八幡を起点に琵琶湖をぐるっと時計周りに回ることにしました。さあ、あとはひたすらペダルをこぐしかない!この時期、朝5時ごろまでは暗いのでなかなかスピードが出せず苦戦、6時前にようやく琵琶湖大橋の東詰付近(守山)を通過しました。因みに私の中で琵琶湖一周とはクルマであろうが自転車であろうが、、瀬田の唐橋を渡って「ちゃんと一周」するのが決まりです。途中の琵琶湖大橋や近江大橋を渡って「琵琶湖一周した」と言う人もいますが、そんなものは邪道です!

空が明るくなって幾分速度も上がってきたのですが、琵琶湖の南の端(瀬田の唐橋)を通過したのが午前7時。近江八幡を出発して3時間、もう結構な距離を走ったと思ったのに・・・まだこんな所!? 地図を見て早くも後悔の念が(汗)。琵琶湖、デカイとは十分承知していたつもりですが、自転車で走るのがこれほどとは。南湖(琵琶湖大橋から南側)だけでもかなりの距離があります。瀬田の唐橋から琵琶湖大橋西詰付近を通過するまでは信号も多く、交通量も多い為、想像以上に時間がかかってしまいました。このペースじゃヤバイ。結構頑張って走ってきたのに・・・(怖)。琵琶湖大橋西詰付近を通過して北湖側に入ったらもう後戻りはできません!あきらめて帰るなら今ここしかない!琵琶湖大橋を渡って守山側に戻るか、このまま琵琶湖一周を続けるか・・・。本当に琵琶湖一周できるのか? 今日の所持金は小銭ばかり3,000円程度(少なっ!でも給料日前なもので・・・)。飲み物や食事のこともあるので、この先でリタイヤした場合、自転車を置いて電車で帰るとしても微妙な金額、当然日が暮れてもどこかで一泊できる資金は無し(高校生並みの資金難だな、こりゃ)。本当に家に帰れるのかな(怖)。などと心配になってきました。

それでも、意地というものがありますので、行ける所まで行こうと考え直し、このまま進むことにしました。北湖側に入ると、速度も安定しだし距離も随分と稼げる様になりました。途中、比良山のあたりでパイロット社の保養所の看板を発見(ていうか前から知っていたんですが)。だんだんと景色の綺麗なところが増えてきます。間も無く右手に白髭神社の鳥居が見えてきます。ここは湖の中に鳥居が立っている独特の景観で有名な神社です。琵琶湖の有名な景色の一つですね。ちょっと自転車を止めて参拝しましたが、足が重い!石段から落ちそうになりました。既に足に結構なダメージが来ていました。これはヤバイ。まだまだ先は長いのに。しかもこれからいくつも難所が待っているのに・・・。

パイロット社の保養所の看板  白髭神社の鳥居
おっ!こんなところにパイロットの保養所が。 右は湖面に立つ白髭神社の鳥居です。

白髭神社を過ぎてからがまた、きつかった!ただひたすらペダルをこぐ!こいでもこいでも何も近づいてこない!琵琶湖のでかさに少しうんざりします。太陽も完全に昇り、体力の消耗も激しくなってきます。ちょっとした坂道もかなりきつく感じられ、速度も落ち、平坦な道が坂道に思え、無風なのに向かい風が吹いているかのような体の重さ・・・これは修行だな、精神修行だな。本当に家に帰れるのかな・・・そんな思いが過ぎりましたが何とか12時前に無事、今津に到着。そろそろお尻も痛くなってきましたが、ここまで来るとすこしは気持ちにゆとりが出てきます。ちょっと長めの休憩をとります。

今津を過ぎるといよいよ琵琶湖一周で最も難所とされる山岳コースが近づいてきます。琵琶湖の北の端あたりですね。この辺はバイクで走るには最適のスポットで休日ともなるとツーリングのライダーが押し寄せます。ワインディングもいっぱいです。ただ、今回は私、自転車なんですよね(泣)。僅かな道の勾配も苦痛に感じられる状況に、本格的な山岳路に挑まなくてはなりません。自転車を押して歩いてでも乗り切らねば・・・。ママチャリの最大の弱点に気付きました。乗っているときは気にならない重量も坂道を押して歩くと結構きつい。元気なときならさほど気にならないのですが、朝から既に100キロ以上走ってきた体にはきついものがあります。

あー。これは修行だな。自分との戦いだな、と真剣に思い始めました。辛い!辛すぎる!!そんな中、あることを思い出しました。数年前、昔からの友人A君(妻子有り)と飲んだ時のこと、少し酔っ払ったのか彼はこんなことを告白しました「子供の時(いや多分、中学の頃まで)、頑張ったら、かめはめ波が出せると思ってた・・・」。それを聞いた僕は、「そ、そうなんや(汗)」なんて言いながら心の中で「痛い!痛いなーA君。かめはめ波って・・・」と、ちょっと可愛そうな目で見てしまった(笑)。でも、自分がほぼ修行状態(既に目が死んでいる)で自転車をこいでいると、「いやいや、あの時はあんな風に言ったけど、A君、きみなら頑張って修行すれば、かめはめ波が出せるよ!きっと。僕には無理やけど」なんていう意味不明な思考が(汗)。あまりの疲労で脳の思考回路に異常をきたしているのか???

坂道で愛車を撮影
超危険なトンネルを避け、山道の続く迂回路へ。きつい・・・。


そうこうしている内に今回最大の難所である湖北の山岳道路を切り抜けることができました。コンビニに入って少し食料を調達し休憩をとると、意外や意外!体力が若干回復しました!いや、体力じゃなくメンタル面が回復したのかも!?道も平坦で比較的走りやすいところが増え、スピードもアップ!順調に距離を稼いで、長浜、彦根までは自分でもびっくりするくらいスムーズに到着しました!これは後で気付いたのですが、風向きも良かったのかも知れません。少し追い風気味で走ってこれた様です。今日は天気も曇り勝ちで、風もほぼ無風状態という自転車の琵琶湖一周にはうってつけの日和でもあり、ここまであまり無理をせず、できる限りマイペースを守って走ってきたのも効果的でした。

ところが、彦根まで来て後は余裕!?だと思っていたのですが、ここからが大変でした。先ほどまでとはうって変わってペダルをこいでもこいでもスピードがのりません。全然距離が稼げません。お尻も痛いし・・・。どうやら風向きが変わって向かい風になってしまった様です。それに、普段見慣れた場所まで戻ってきたという安心感からか?今までの緊張の糸が切れてしまった様で、次第に日が暮れ始めたこともあり、急に焦りが出てきました。最後の最後でマイペースを崩し、少々無理をしてしまいました。今まではそれほど気にならなかった脚の筋肉が急に痛み出しました。遂に、すっかり日が暮れて、最後には少し雨にも降られて・・・。疲労困憊、転がり込む様に自宅に到着したのは午後7時ジャスト! 色々ありましたが、15時間で琵琶湖一周して帰ってくることができました!!およそ200キロの過酷な道のり、うーん。我ながらよくやったものだ!怪我も無く無事に到着です。 今のところ、自転車で琵琶湖一周、「二度とやるか!」と言う感じですが(笑)、ひょっとするとまたやる時が来るかも知れません。

今回使用したミヤタ製の自転車

今回、琵琶湖一周に使用した自転車です。宮田工業製で主要部品は中国製だと思いますが、丈夫で乗りやすく非常に優秀なママチャリです。近所の自転車屋さんがミヤタの販売店なので、うちでは自転車は代々ミヤタ製です。私の中では自転車と言えばミヤタ、と言うイメージが強いです(笑)。宮田工業さんは猟銃メーカーから始まった日本最古の自転車メーカーである点も気に入ってます(笑)。因みに、数日前に納車されたばかりでまだお金払ってません(汗)。異常にでっかい前カゴ(自転車屋さんが間違って注文した・・・仕方なくそのままゲット・汗)と、シマノの外装7段変速がポイントです!あとカラーリングがよくあるシルバーとかでは無く、グラスブルーブラックというのもポイントですかね。ブルーブラックって万年筆のインキの色みたいです(笑)。この変速器は安いマウンテンバイクに搭載されているものと同じなので、ママチャリと言えどもちょっとしたマウンテンバイク並みの性能がありました。深めの泥除け、ライト、防犯用ロック、クッション性の良いサドル・・・琵琶湖一周は快適な舗装路だけでなく、一部ダートや砂が溜まった路面、でこぼこ道も走りますので、スポーツ車よりもこんなママチャリが最適ですね(できれば3段以上の変速装置付が良いと思います)。今回の琵琶湖一周はこの自転車に助けられた部分がかなり大きいですね。特にこのサドルは優秀です。お尻が痛くなりにくい!!私はやせているので、最後のほうにはお尻が痛かったですが、マウンテンバイクなどのスポーツタイプのサドルに有りがちな「局部の痛み」が全く無かったのは驚きです。 皆さんも自転車で琵琶湖一周される際には是非ミヤタの高性能なママチャリを!(私は別にミヤタさんの回し者ではありませんよ・笑)


2007年9月24日  スミ利文具店 藤井稔也



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